特に社員数が多くなれば、社長の意志も経営理念もなかなか届かなくなるのが当たり前
3つの視点を持つ経営理念を浸透させるうえで大切な3つの視点をお話します。
(1)立場 = 創業経営者か、それ以外か(二代目、三代目、雇われ社長など)
(2)意志の強さ = 経営理念に対して強い意志を持っている、持っていない
(3)社員数 = 10名まで、~30名、~50名、~100名、100名以上など
経営理念の浸透に欠かせない3つの視点 (1)立場あなた自身が創業者である場合とそうでない場合について、経営理念を浸透させるときにやり方が違ってくるということです。どういうことかというと、創業経営者であれば、自分自身の中に持っている経営理念を、自分の考えで全従業員に対して伝えることできるということです。
それは誰に遠慮することもなく、「私はこうしたい!」という強い思いを実現させるものが会社であるため、自分の思いをそのままストレートに伝えることができるわけです。 しかし、二代目経営者、三代目経営者、または雇われ社長の場合にはそうはいきません。
たとえば、二代目経営者の場合、創業社長がいて、創業社長の考えがあり、その人が持っていた経営理念と、まったく違うものを自分が経営理念として掲げることはむずかしいのです。 その理由は簡単です。いままでの経営理念と違うからです。
そして、いままで働いていた社員がいるからです。仮に、わかりやすく100人の社員がいるとしましょう。その人たちは創業社長と、ある思いを持って仕事をし、5年、10年、20年、30年と一緒に仕事をやってきたわけですから、やってきた仕事の中身もわかれば、やってきた仕事の思いについても十分理解をしています。
ところが、二代目、または三代目の社長であるあなたが、突然大学を卒業し、20代でその会社に入ったとすれば、すでにお話ししたように、あなたが赤ちゃんの頃から知っている、部長クラスの人、50代、60代の人は、赤ちゃんのあなたを想像するだけで、大人になったあなたの考え方に、簡単に賛同するということはむずかしくなるわけです。
したがって、二代目であるあなたは、いまいる社員の考え方を理解したうえで、経営理念をつくり、浸透させていくということが必要になるわけです。浸透させるということは、ある意味では、いまいる社員の考え方を、オセロのようにひっくり返し、黒を白にするとまではいかないまでも、考え方を変えていく必要が出てくるのです。それは非常にむずかしい事柄になるわけです。
経営理念の浸透に欠かせない3つの視点 (2)意志の強さあなた自身が持っているいまの経営理念が非常に強いものなのか、そうでないのかによって、経営理念の浸透のさせ方、および浸透の度合いというものは変わってきます。
田の字の図をつくったとしましょう 左右に「創業社長」「それ以外」とあります。縦横に「経営理念をしっかり持つ」「まあまあ」とあります。つまり、ここに4つの事象があるわけです。
(i)創業社長であり、経営理念をしっかり持っている場合
これは浸透のさせ方も簡単ですし、社長も非常に強い思いを持って浸透させていくことができます。
(ii)創業社長であり、経営理念がまあまあ
創業社長であるので、自分の思いで好きなように、いまの会社に考え方を伝えていくことはできます。しかし、自分自身の経営理念が非常に強いものではなく、「まあまあこれでいいかな。こんな感じような思いなんだよな」というレベルの人も多いと思います。
その場合には、浸透のさせ方も、浸透していく度合いも、経営理念をしっかり持っている場合とは違ってくるわけです。そして、自分自身の考えがまあまあであるならば、経営理念がさほど強い思いでないならば、無理に時間をとってやっていくというよりも、少しずつゆっくりと経営理念を浸透させていくということが大事になります。
(iii)創業社長以外(二代目、三代目、雇われ社長)で、経営理念をしっかり持っている
この場合には、自分の考え方を強く持っている分、気をつけなければならないところがあります。それが、いままで働いていた人の考え方であり、いままであった経営理念との違いです。
こんなことはないかもしれませんが、「先代の経営理念が右に行く」だったのに、「私の経営理念は左に行く」というようなまったく逆の考え方を自分が持っているとすれば、それは、社員も非常に混乱を起こしやすくなるわけです。そういった違いを自分自身が理解し、社員の気持ちを汲んでいくということも大事なこと項目になります。
(iv)創業社長以外で、経営理念がさほど強くない、まあまあ
この場合は、浸透のさせ方も一番むずかしいですし、浸透させていくのに非常に時間がかかっていく感じになります。たとえば、(i)の創業社長であり、経営理念をしっかり持っている人が1年かかるところを、3年から5年くらいかかるようなイメージだと思います。大きな理由は、自分自身の考えがさほど強くないこと、そして、いままでの社員がいること、そしてその人たちにも先代の社長の考えが染みついていて、それが変えづらいということが挙げられます。
経営理念の浸透に欠かせない3つの視点 (3)社員数社員数の違いによって、経営理念を浸透させるときのむずかしさ、または浸透度というのは当然違ってきます。たとえば、創業したばかりで、3人で会社をつくったというのであれば、自分以外の2人とは毎日のように話し、自分自身の考えも伝わっていくと思います。
しかし、会社が大きくなり、5人、10人となっていくと、互いのコミュニケーションの量も少なくなり、質も下がってくるわけです。社員が1人だったときに1人に対して10伝えられていたことが、社員が10人となれば、その10分の1となると思えばいいわけです。
まず一つ目の段階が、この10人までです。 そして次のステージが30人。こうなってくると、全体的に、だんだんと自分の考えていることが伝わらなくなってくる感覚を持っている社長も多いと思います。同じようにして50人になってくると、自分が思っていることとまったく違うようなことが、社員の間で話されているというような感じになってきます。
これがいわゆる「自分が思ったことが伝わらない」「ベクトルが合わない」というようなことです。 そして、その次のステージ、社員が100人までともなると、社長の考えが本当に全員まで伝わっているとはいいがたくなってきます。
それを回避し、社長の考えを全社員に伝えていく。そのための仕組みが経営理念をつくることであり、そしてこの経営理念を浸透させるというプロセスになってくるわけです。もちろん、社員が100人を超えれば、経営理念の浸透はさらにむずかしくなってくるわけです。