経営理念のでき上がりイメージを3つの段階に分けてみたいと思います。
(1)A4の紙1枚の経営理念
(2)A4の紙2~10枚程度の経営理念(ファイルになったもの)
(3)手帳(50~100ページのもの)
一番始めは、(1)A4の紙1枚の経営理念をつくることです。始めから気合を入れて、分厚い100ページもあるような経営理念((3)手帳)をつくろうとするとうまくいきません。そこにはいくつかの壁があります。
・まず、時間がかかります。つくり始めてから1年かかるイメージです。
・人出もかかります。プロジェクトチームをつくって、本業のパワーが割かれます。
・お金もかかります。自社でやるならまだしも外部に発注すると300万~1000万円、高いものだと5000万円くらいかかります。
売上が1000億円を超える大企業なら5000万円払うこともあるかもしれません。しかし、売上100億円くらいまでの中堅企業なら外部に丸投げするのではなく、まず、社内で検討することが大切です。ましてや、日本の企業の90%を占める売上10億円以下の企業であれば、数百万円も使ってデザイナーを使ったこぎれいな冊子をつくるよりも、経営理念の本質である「思い」の部分に注力することをすすめます。
でき上がりは、(1)紙1枚 ⇒ (2)紙2~10枚 ⇒ (3)手帳(50~100ページ)と増やしていくイメージがいいと思います。(1)紙1枚を1週間程度でつくり、数か月~1年使ってみる、使いながら足したい言葉が出たら追加し、そのつど修正していく。
書き足したいことがたくさん出てきたらその言葉を別のノートに書きとめておいて、ある分量がたまったら、次のステージである(2)紙2~10枚へと進む。同じように追加したい考え方を書きとめておいて、さらに(3)手帳(50~100ページ)へと進化させてゆくのが確実に進んでいく方法です。
経営理念は社長の「思い」「思考」をはっきりさせる必要があるので、1日ではできません。ちょうどワインが熟成するように、経営者の「思考」も時間をかけて熟成されます。20代で会社を起こした経営者が、30代になってもまったく同じ「考え」であるはずがないのです。
自分が年齢を重ね、社会経験を積むことで「考え方」も変わり、人格も変わるはずです。そして、会社の内容や規模も変わっていくでしょう。一番の根本となる「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」という部分は変わらないにしても、事業の領域や、提供するサービスも変化するかもしれません。
経営理念は変えてもいいものなのです。変わっていくべきものなのです。そう考え、自分のペースで自分の人生を歩くように、自分のペースで経営理念をつくっていってください。(1)紙1枚で1年やり、2年目に(2)紙2~10枚つくり、そのうえで(3)手帳(50~100ページ)を3年目以降につくるというスケジュール感でちょうどいいかもしれません。あまり急がずに、でも着実に、経営をするのと同じように進んでいってください。