経営理念(例)をつくるポイント 自立・成長・貢献

ポイント4「社是」として、自立・成長・貢献という言葉を入れました。

(1)「自立」とは、精神的、経済的自立を意味する
精神的自立とは、他責しないということです。さまざまな事柄を自分以外の責任にしないことです。

売上が上がらないのは、商品が悪いから、買ってくれないのは顧客が悪いから、会社がうまくいかないのは社員が悪いから、といつも自分以外に原因を求めると他責することになります。そうではなく、「原因自分」と思うことです。すべての事柄の原因は自分にある。別に自分を責めろというのではありません。自分が責任を持つ範囲を極限まで広げるという思考を持つことです。

「郵便ポストが赤いのも電信柱が高いのもすべて社長の責任」と思うことです。会社の業績が悪いのは、社員の責任ではなく、全て社長の責任と心から納得することが自立することへとつながっていきます。「原因自分」と思うことです。

一方、経済的自立とは、人に頼らずに経済的にやっていけるということです。個人であれば自分で稼いだ分の収入で生活をする。親の収入に頼りすぎない。経済破綻するような過大なローンを組まない、といったことです。同じように企業では、会計上「黒字」であるということです。収入の範囲内で収支を収める。銀行に頼りすぎない。返済可能な必要な分だけ借りる、といったことです。「自立する」「他責しない」「原因自分と思う」という考え方です。

(2)「成長」とは、昨日の自分を超えることである
「人として成長する」というキーワードは、個人にとっても企業にとっても大切なキーワードです。「成長」とは他人との競争だけに明け暮れるのではなく、本当の競争相手を自分自身と思い、「昨日の自分を越えること」を自分自身の目標にすることです。

そして、会社で働く期間だけ成長を意識するのではなく、死ぬまで勉強、死ぬ最後のその日まで人間として成長してゆくことを目標にすることができます企業の視点から見れば、社員の成長こそが企業の成長です。社員の成長がなければ、会社の成長はありえません。それが、人材が大切だといわれる一つの理由です。

「この会社に入ったお蔭で一人でやるより成長できた、多くのことができた」「この会社に入ったお蔭で、海外でこんな経験ができ、成長できた」と感謝する社員がどのくらいいるかは会社を見る大切な指標の一つです。初めは、仕事で仕方なく企業を100件も回らされたかもしれませんが、それが自分の成長につながった、と本人が思えることも多いのです。

より高いレベルの仕事こそが、人を育てます。人材育成は社員のためでありますが、それがそのまま企業のためになるのです。社員のために社員の教育をしてやっていると考えるより、会社の成長のために社員教育が必要なのだという考え方の方が、お互いに得るところがあるように思います

(3)「貢献」とは、人の役に立ち、喜ばれ、感謝されることである
経営理念をつくるうえで、この「貢献」というキーワードは必須です。貢献とは、仕事を通じて人の役に立つことです。たとえば、「この商品は役に立ったよ!」「この店があってよかったよ!」「あなたの会社がなければ困るよ」と思ってもらうことです。それは人に必要とされることです。そして、人の役に立つことで、人に喜ばれることです。さらに、感謝されることです。「ありがとう」といってもらえることです。

貢献するとはこういったプラスの、うれしい感情を受け取ることになります。貢献するとは与えることなのですが、受け取ることになるのです。人に役に立ち、喜ばれることで、自分がうれしくなる。人に「ありがとう」と言われてうれしくなるのです。「人の役に立った、人に喜ばれた、人に感謝された」ということが、その人のモチベーションを上げます。それが、その人の自己肯定感をつくり、自己概念(セルフイメージ)を上げることになるのです。

たとえば仮に、腕立て伏せを1000回連続でできるようになりたいという自己実現欲求を満たした場合、達成感はありますが、自分一人のことであり、周りの人との関係がありません。一方、「この店があってよかったよ!」と喜ばれることは、自分の達成感だけではない、他者との関係性の中でつくり上げられるものです。われわれ日本人はこういった「貢献」「利他」という考え方の中に、幸せ感や生きがいを感じる高度な感性を持ち合わせているといっていいのかもしれません。

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