経営理念は「なぜ?」に答えるためにある

「なぜ?」と深く掘り下げて考えることは哲学していることになる

【質問】経営理念は何のためにあるのですか?

この質問に対しての答えは、経営理念は「なぜ?」(WHY)に答えるためにあるといえます。

「われわれはなぜ働いているのか?」
「われわれは何のために生きているのか?」
「なぜ、この仕事をするのか?」
「なぜ、ここまでやるのか?」

こういった質問に対しての答えが「経営理念」といえます。それは、働く理由、生きている理由、がんばる理由です。言葉を変えると、労働観、人生観などの「世界観」ともいえます。「なぜ働くのか?」という働く理由は、労働観ともいえます。そして、「なぜ働くのか?」を突き詰めていくと、「なぜ生きているのか?」「自分はどう生きたいのか?」「どんな人生でありたいのか?」という人生観に至ります。

このように物事に対して「なぜ?」と突き詰めていくことを「哲学」と呼びます。したがって、経営理念とは経営哲学であるといえるのです。

創業をするときに強い意志を持って、「私はこういう経営をする!」という経営理念で会社を始める人もいるでしょう。2代目でなんとなく跡を継ぎ、仕事をするうちに壁に当たり、「仕事とは何だろう?」「社員は何で働いていてくれるんだろう?」と悩み苦しんで経営理念に行き着く人もいるでしょう。どんな場合でも、社長という責任の重さに押しつぶされそうになりながら、自分なりに「何でこうなるんだろう?」「どうしたらいいのだろう?」と悩んだ末の自分なりの答えが、経営理念なのではないでしょうか。

ここでのポイントは「なぜ?」(WHY)です。

「なぜ?」「何?」「どう?」で経営理念を考える経営理念を考える3つのヒントは次のとおりです。

(1)「なぜ」(WHY)
(2)「何」(WHAT)
(3)「どう」(HOW)

■(1)「なぜ」(WHY)
最も重要なのが「なぜ」(WHY)です。これが経営理念の根幹となります。「目的」「理由」「本質的なもの」ともいえます。「会社をやる目的、会社をやる理由の一番の根っこ、その本質」という表現になります。「なぜそう判断するのか?」という判断基準を示すものでもあります。「なぜそう判断するのですか?」と聞かれたら、「『人として正しいことを判断基準とする』これが理由です」と答えられるものです。

「なぜ、会社を経営しているのですか?」に対する答えは、「人を幸せにするため」です。「会社は人を幸せにするための道具である」「会社は世の中に役に立つための道具である」と社員に答えてあげてください。

■(2)「何」(WHAT)
「何をするのか?」は事業の領域を示すことができます。「地域の人に安全な食材を提供する」は経営理念といえます。「私たちの会社は医療機器を通じて安心を提供します」という経営理念もあるかもしれません。たとえば、ソフトバンクグループの経営理念は「情報革命で人々を幸せに」です。「何をするのか?」というと、「人々を幸せに」する。そういう会社であろうという意思を表わしています。つまり、「何」(WHAT)は、経営理念の中でも「事業領域」「意志」「方向性」を表わすものといえます。

■(3)「どう」(HOW)
「どう」(HOW)については、次の2つがあります。

(i)存在=あり方(How To Be)
これは「わが社はどうありたいのか?」「どういう存在でいたいのか?」といったものです。

【セコムグループが実施すべき事業の憲法】
セコムは、常に革新的でありつづける。
セコムは、すべてに関して礼節を重んずる。

この場合、「私たちの会社は、こうありつづける」という会社の「あり方」「姿勢」「ありたい姿」を伝えています。"How To Be"、どうありたいか。あり方、"Being"ともいえます。

(ii)方法=やり方(How To Do)
こちらは「経営理念」というよりは、「経営戦略」の領域に入ります。どうやるか、実際のやり方、"How To Do"です。たとえば、「会社から半径30分以内だけを営業する」は、経営理念ではなく、経営戦略です。「経営理念」とは根本となる考え方、哲学といえるものであり、その考え方をより具体的に実行するやり方が「経営戦略」となります。つまり、(i)存在=あり方(How To Be)は経営理念ですが、(ii)方法=やり方(How To Do)は経営戦略になると覚えておいてください。

5W2Hの中でも、(1)「なぜ」(WHY)、(2)「何」(WHAT)、(3)「どう」(HOW)の3つが経営理念を考えるヒントになります。
*5W2Hとは「いつ・どこ・だれ・なに・どう・なぜ・いくら」、When Where Who What How Why How muchの頭文字をとったもの。

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