利益を出す目的は社員を幸せにするため
ここで、「『全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること』これ以外に企業の目的はない」という言葉を分解して考えてみましょう。
「物心両面の幸福」ということは「物と心の幸せ」です。まず、「物」の幸せがあります。これは「経済的豊かさ」と言い換えられます。つまり、(3)経済性の追求のことです。次に、「心」の幸せです。これは「この会社で働けてよかった」という満足感だと思います。それは、次のようなものです。
「この会社で成長できた」
「この会社の人たちと働けてよかった」
「給与も少しは多くもらえた」
「家が建てられた、子どもを学校に行かせられた」
「この会社を誇りに思う」
つまり、次のようなことの総和です。
「仕事を通じて仕事ができるようになった、人間的に成長したという成長感」
「いい人たちと働けた、温かい人間関係が持てたという所属感」
「家も持て豊かな生活ができたという満足感」
「子どもを学校に行かせることができたという達成感」
「会社を誇りに思える満足感」
そして、それを実現するために(3)経済性の追求が必要になるのです。社員の生活を守るために、給与をきちんと払い続けることができるために、会社は利益を上げ続けなければなりません。利益が出なければ社員の給与が払えないばかりか、会社自体が存続できなくなるからです。
また、利益とは会社がつくる「付加価値」です。その付加価値をつくるのは、「社員」なのです。設備投資をした機械だけが付加価値をつくるのではなく、社員が付加価値をつくります。したがって、社員は付加価値がつくれるように、「成長」し続けなればなりません。ずっと新入社員のレベルですべての仕事をしていたら、付加価値が上がらないからです。
人は仕事を通じて、成長し成長感を味わいます。仕事を通じて人と関わり、所属感を持ちます。仕事を通じて、できなかったことができるようになり達成感を味わいます。そして、仕事を通じてつくり上げた実績や、そのときに味わう喜びや感情が、その人の誇りとなるのです。このプロセスが人間性を向上させます。
つまり、経営の目的とは社員を幸せにすること、社会に貢献すること、そのために利益を出すことといえます。人間性を追求することが社会性を追求することになり、同時に経済性を追求することになる。この(3)つの要素を追求することが、経営をするうえで大切といえます。