中小企業の経営がうまくいかない原因は、社外にあるのではなく多くの場合は社内にあります。世界経済がどう、景気がどう、市場の変化がどうといってみても中小企業にはあまり関係がありません。SWOT分析がどう、バランススコアカードがどう、戦略がどうといってみてもそれが機能しなければ何も生まれません。
売上数字があがらないのは戦略がないからです。会社にまとまりがないのは経営理念がないからです。そして、会社にまとまりがないことのほうが、戦略がないよりも問題なのです。つまり、社員が一生懸命働いてくれないことの方が問題なのです。だから、社員がいうことを聞かない、ベクトルがあわないことに注目した方がいいのです。社外に原因を求めるより先に、社内でできることがたくさんあるはずです。
長年働いている社員が多い会社でも、一人ひとりの価値観がバラバラなので仕事をする上での判断基準がぶれているという会社はたくさんあります。中途採用者が多ければなおさらです。例えば佐藤部長(仮称)は売り上げが大切だといっているが、伊藤課長(仮称)は利益が何より大切だといっていると、メンバーは迷います。どっちを信じていいのかわからなくなる。この迷っている時間が生産性を大きく悪くするのです。
そしてさらに、「売上重視なら商品A、利益重視なら商品Bであることはわかっている、でも、どうしようかな・・・まあ、今回は佐藤部長が言うから、商品Aをやっておくか」といういい加減なやり方になってしまうのです。
つまり、経営理念がないために社員が迷います。ベクトルがあわないのです。判断基準がぶれているために社員が投げやりになります。そして、社員がついてこないのです。だから、しっかりとした考え、判断基準、つまり経営理念が必要となります。そうすれば社内がまとまり、経営がうまくいくようになるのです。でも、考え方、経営理念については、学校でも社会に出ても、誰も教えてくれない場合が多いのです。だから、多くの人は経営理念の重要性についての理解がなく、経営理念を軽視しがちです。しかし、組織をまとめてゆくには経営理念ほど重要なものはないといえます。