このような少し繊細な言葉の使い分けをし始めると、次のような疑問が出てくるかと思います。
「では、信条とモットーの使い方はどう違うのか?」
「スローガンとクレドとウェイをどう使い分けるのか?」
「ヤマトホールディングスの社訓はクレドと言えないのか?」
こういった言葉の違いを厳密に理解していくのは後でいいと思います。売上1000億くらいある会社が2000万円以上の予算を使って経営理念をつくる場合は、こういった議論をしてもいいでしょう。しかし、売上10億円クラスの中堅・中小企業で経営理念をつくる場合は、あまり気にしすぎないことです。こういった言葉の違いについては「知っている。でも、あまりナーバスにならない」というスタンスがいいと思います。
信条、クレドの例ジョンソン・エンド・ジョンソンの我が信条(クレド)の最初には、「我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する」とあります。つまり、「『我々の責任はこういう人たちに対するものだと確信する』と信じている、それが道理である」と言っているのです。これが信条です。
モットーの例モットーは、(イタリア語)方針、信条、スローガンという意味です。
カシオ計算機の経営モットーは「創造 貢献」です。それまでにない斬新な働きを持った製品を提供することで、社会貢献を実現するという意味です。
【ザ・リッツ・カールトン「モットー」】
紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です。
スローガンの例スローガンは、(英語)理念や目的を、簡潔に言い表わした覚えやすい句です。
カルピスの企業スローガン「カラダにピース CALPIS」は、企業理念をわかりやすくシンプルに表現しています。"カラダ"に良いものがもたらす健康と、穏やかに心安らぐ情緒的な健康、"ピース"の双方を視野に入れた、「『健康価値創造企業』を目指して成長を続けていく」という願いを込めています。
【クオール(調剤薬局経営) 「スローガン」】
あなたの、いちばん近くにある安心。
ウェイの例ウェイは、(英語)道、やり方、方向性、価値観です。
「花王ウェイ」は、花王グループの企業活動のよりどころとなる企業理念(Corporate Philosophy)です。これは(1)使命、(2)ビジョン、(3)基本となる価値観、(4)行動原則の4つで構成されています。「『花王ウェイ』は企業理念です」と言い切っています。つまり、「ウェイ」=「企業理念」と定義しています。使命、ビジョン、基本となる価値観、行動原則を総称して「ウェイ」と呼んでいます。
なお、「ウェイ」を「○○流」「○○方式」「○○イズム」という言い方をする企業もあります。