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論語と算盤 =経営理念と売上・利益 

「道徳なき経済は罪悪であり 経済なき道徳は寝言である」 (二宮尊徳)

 

 ここでは一つの視点として『論語と算盤』という切り口で見ていきたいと思います。つまり、経営理念と売上(利益)の関係です。

 

1.経営理念はない、売上もない

2.経営理念はない、売上はある

3.経営理念はある、売上がない

4.経営理念がある、売上もある(これが、ある意味、理想型)

 

1.経営理念はない、売上もない

 経営理念も売上もないまったく初めての状態です。会社を創業する前の段階といっていいかもしれません。

 

2.経営理念はない、売上はある

 1.の段階から、2.の経営理念はないが売上はある状態になることがよくあります。「とにかく働いてお金を手にしよう。まずは食べることだ。経営理念なんて考えていられない」と考えて、必死に働く創業社長のイメージです。ここではつまり、経営の目的はAお金のためという気持ちが大きいのです。

 

3.経営理念はある、売上がない

 1.の段階から、3.経営理念はあるが売上がない状態になる会社はどちらかというと少ないものです。もともと会社をつくるときに「世の中を変えよう!」という気高い思いで創業する人は少数派です。そして、会社をつくって売上もないのに経営理念のことばかり考える人も少ないと思います。


「そんなこと考えているより早く売上を立てなさい!」と周りの人に言われるのがオチです。しかし、数は少ないのですが思いが強いので、大化けする可能性も高いといえます。

 

4.経営理念がある、売上もある

 この経営理念も売上もある状態はある意味理想といえます。この状態になるのは2つの道筋があります。1.→2.→4.と、1.→3.→4.です。

 

1.→2.→4.

 これは、売上ができてから経営理念を考えるパターンです。たとえば、売上が1億円、10億円と増えれば社長の生活もある程度安定し、生活もエリートサラリーマンよりも良くなる場合があります。


年収も1000万円、2000万円、3000万円と増えていきます。そうなると、脱サラして創業し苦労して会社を大きくしてきた満足感が出ます。「自分も苦労してここまで来た、サラリーマンのときよりもずっと生活が良くなった」と思うわけです。


 ある経営者はそこで満足して経営理念なんてものは考えずに、リタイアする場合もあるでしょう。またある経営者は、ここまで良い生活ができるようになったことに感謝をして、ここまで会社を大きくしてくれた社員に感謝をしようと思う場合もあるでしょう。ここが一つの分かれ道になるようです。


 さらに、経営理念がないけれども売上が50億円、100億円と増えれば、生活をするお金の苦労はほとんどなくなります。事業意欲の強い経営者が「何のために経営をしているのか?」と考え方が変わるのはこういった売上の変化といえます。


 売上の変化とは「社会的位置づけの変化」ともいえます。会社が大きくなれば、顧客や仕入先、地域の人からの扱いが変わり、つき合う人が変わってきます。そういった変化が経営者の考え方を変えていくことになるのです。


 また、売上の変化とは「社員数の変化」ともいえます。人が増え、社長の思いが皆に伝わらなくなることがよくおこります

 

1.→3.→4.


 これは、経営理念を持ちながら売上をつくっていった人です。経営をし、会社が大きくなってゆく過程では必ず経営理念を見直しているものです。経営理念を見直すというよりも、毎日経営をする中でたくさんの事柄に出会い、経営に対する考え方が変化、成長していくのだと思います。


 たとえば、上場している創業社長の例としてワタミの渡邉美樹氏はこう言います。「居酒屋の経営がうまくいき、収入が上がって、念願の車を買おうと思ったが、なんとなく後ろめたい。なぜかと考えたときにふと思い至ったのは『このお金は自分のものじゃない』ということ」。このお金は社員が働いて稼いでくれたものだとわかったのだと言います。


 また、日本電産の永守重信氏は、「お金が手に入ったときにこんなもののために働いていたのか、1億円を越えたら全部同じ。10億でも100億でも」と言います。「お金のためだけには働けない」と。


 年収が1億円を超えないとなかなかわからない感覚かもしれませんが、お金のためだけに働くとなぜかうまくいかなくなるのです。本当にお金をもうけられるようになった人はお金のためだけに働かないようです。もう、使いきれないくらいあるわけですから、ある意味当然ともいえます。

 

 経営の目的に気づくには、人それぞれのステージがあるのだと思います。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるように、ある程度の経済的豊かさがあってはじめて、次のステージに行けるのかもしれません。


 食うや食わずの生活を続けながら経営理念を唱えることもできますが、やはりつらいものです。「ふくれた財布が素晴らしいとはいえない。しかし、カラの財布は悪いのだ」という言葉がユダヤの格言であります。


創業のときにお金に苦労した経営者や資金繰りで大変な思いをした経営者ならお金の大切さを身に染みて感じていることと思います。


 私も独立して会社をつくった時のあの怖さを、ときどき思い出すことがあります。何の売上のあてもなく、妻と子どもがいて独立をする。「売上が立たずにこのまま行ったら、いったい自分と家族はどうなってしまうのだろう……」と体を縛りつけられたかのような恐怖感を味わいました。


それは、創業した人なら誰にでもある経験かと思います。そういった恐怖の中で心の支えとするものが経営理念なのかもしれません。